理解して覚えることの大切さを、
野球のルールを用いて解説します。
「野球のルール検定」みたいな試験が仮にあって、
紅緒が受験するとします。
このようなルールを覚える試験です。
「0アウトまたは1アウト」で「走者(ランナー)1・2塁または満塁」の場面において
打者(バッター)が打ち上げた飛球(フライ)のうち、審判員が「内野手が普通の守備行為を行えば、捕球できる」と判断したものを、インフィールドフライという。
(公認野球規則 本規則における用語の定義40より。一部変更)
そして、その正誤を答える試験です。
紅緒は試験のために、必死になってルールを紙に何回も書いたり、暗唱して覚えようとします。
そして、過去問や予想問題を解いていて、
インフィールドフライの宣告条件を答える問題で、
「あー、そっか。2アウトだとインフィールドフライは宣告されないのか。
ルールを覚える時に、走者1・2塁の”2″って文字が記憶にあったから、勘違いして2アウトでも宣告されるのかと思ってた。惜しかった。」
と、丸付けして解説を読んだ後に言っていたら、
野球に詳しいあなたはどう思いますか?
「いや、全然惜しくないよ。インフィールドフライって、
“守備側がわざとフライを捕らないで、アウトカウントを稼ごうとするのを防ぐ”ためにあるんだから、2アウトで宣告されるわけないよ。
だって、守備側は普通にフライを捕れば3アウトでチェンジになるんだから。」
と思うはずです。
また別の問題を解いて、
「あー、そっか。2アウトの時は宣告されないのは覚えたんだけど、ランナーなしの時も宣告されないのか。
ルールを覚える時に、0アウトの”0″って文字が記憶にあったから、勘違いして走者が0でも宣告されるのかと思ってた。惜しかった。」
と言っていたら、
「全然惜しくないよ。
だって、守備側がわざとフライを捕らなかったとして、守備側に何のメリットもないじゃない。ランナーいないんだし。
…紅緒さん大丈夫?」
と思うはずです。
さらに別の問題で、
「2アウトやランナーなしの時は宣告されないのは覚えたんだけど、ランナー2塁の時は宣告されないのかぁ」
と言っていたら、
「その2塁ランナーに進塁義務が発生しないじゃん。だって1塁が空いてるんだから。」
と思うはずです。
また別の問題で、
「ランナー1塁の時も宣告されないの?この1塁ランナーって進塁義務が発生するよね?」
と言っていたら、
「確かに進塁義務が発生するけど、守備側がわざとフライを捕らなくても、打者が全力の走塁を怠らないなら、1塁ランナーと打者が入れ替わるだけで、アウトカウントが増えるわけじゃないから、宣告されないよ。
普通にフライを捕っても1アウト、わざと捕らなくて1塁ランナーをアウトにしても同じく1アウトなんだから。」
と思うはずです。
こんな感じで、
「ランナー2・3塁の時は宣告されるんだっけ?」
「ランナー1・3塁の時は宣告される?されない?」
みたいに言っていたら、
優しいあなたは、ついに直接アドバイスしてくれるはずです。
「厳しいことを言うけど、紅緒さんはこのままじゃ絶対に不合格だよ。
だって、何も理解していないんだから。
“「0アウトまたは1アウト」で「走者(ランナー)1・2塁または満塁」の場面において~”
ってルールをただ丸暗記しているだけ。
意味を理解していなくて丸暗記してるだけだから、
「2アウトでもインフィールドフライは宣告される?されない?」って思うのよ。
このルールがどんな目的で作られているかを理解すれば、覚えることなんてほとんどないよ。
このルールって、
「守備側が普通にフライを捕ればアウトが1つのところを、
わざと捕らないで、アウトを2つ以上取ろうとするのを防ぐ」ためにある。
このルールがないと、
進塁義務が発生するランナー2人以上いる場合、
打者のアウトを1つ取るんじゃなくて、進塁義務が発生するランナー2人以上をアウトにしようとする。
それだと、守備側が有利すぎる。
そこで、打者がフライを打ち上げた瞬間に審判がインフィールドフライを宣告して、すぐに打者をアウトにしてあげれば、
進塁義務が発生するランナー2人以上は、その瞬間に進塁義務が消える。
そうすると、アウトカウントは1つだけで、
2つ以上アウトにする選択肢がなくなるから、守備側の有利もなくなる。
話をまとめると、
「アウトを2つ以上」取るのを防ぐためにあって、
それは、
「進塁義務が発生するランナーが2人以上」いる場合。
「走者(ランナー)2・3塁」は1塁が空いているので誰も進塁義務が発生しない。
「走者(ランナー)1・3塁」は2塁が空いているので3塁ランナーに進塁義務が発生しない。発生するのは1塁ランナーの1人だけ。
それを考えると、
アウトを2つ以上取れる時は「0アウトまたは1アウト」の場面だけ。
進塁義務が発生するランナーが2人以上いる時は「走者(ランナー)1・2塁または満塁」の場面だけ。
しっかりと意味を理解していれば、
“「0アウトまたは1アウト」で「走者(ランナー)1・2塁または満塁」の場面において~”
って何回も紙に書いて覚える必要はないよ。
それと、紅緒さんに絶対に合格してほしいから、
最後にもう1つ大切なアドバイスするね。
紅緒さんは、
「理解するのは大変だから、パッと丸暗記して楽に済ませる」
と思ってるかもだけど、
実際はその逆で、
「理解するほうが楽で、丸暗記するほうが大変」だよ。
この問題の場合、
アウトカウントは「0」「1」「2」の3パターン。
ランナーの状況は「なし」「1塁」「2塁」「3塁」「1・2塁」「1・3塁」「2・3塁」「満塁」の8パターン。
つまり、3×8の24パターンの状況がある。
今、紅緒さんは、
「0アウトでランナー1・2塁」の問題、
「1アウトでランナー満塁」の問題、
ってどんどん問題を解こうとしていたけど、
それだと、1パターンずつ24問の問題を解くことになる。
この「野球のルール検定」(仮)ってインフィールドフライの問題が毎年1問出るけど、
練習で24問解いて、試験本番で1問を解けるようにするんじゃなくて、
練習で1問を完璧に理解して、試験本番でどのパターン(24パターン)でも解けるようにするのよ。
丸暗記していると、他の分野への応用が利かない。
例えば、別のルールの問題で、
「いわゆる”振り逃げ”が成立するかしないか」の問題が出るとしたら、
丸暗記してたら、また1パターンずつ24問解くことになる。
でも、完璧に理解していたら、
24問全部解かなくても、
「なぜランナーが1塁にいる時は振り逃げができないのか」
「なぜ2アウトの時はランナーが1塁にいても振り逃げができるのか」
を全部説明できるはずだよ。
重要だからもう1度言うね。
「24問解いて、1問解けるようになる」勉強じゃなくて、
「1問解いて、24問解けるようになる」勉強をしなくちゃいけないよ。
応援してるから、勉強頑張ってね。」
紅緒のために、優しいアドバイスありがとうございます(笑)
以上、理解して覚える重要性の話でした!